僕が家を建てる理由はだいたい百個くらいあって

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島地勝彦『迷ったら、二つとも買え!』を読んで、暑気払いならぬ貧気払い

本書のタイトルの「迷ったら、二つとも買え!」、あるいは「迷う理由が値段なら買え、買う理由が金額ならやめておけ」を、座右の銘として精進したいと考えてはいるのだが、ちょっと気が緩むと、ついつい節約なぞをしてしまいそうになる。まことにもって、遊び、蕩尽し、耽溺するというのは、我々凡人には険しい道なのである。


ということで、生活に「貧乏臭さ」が忍び込んだ気配を感じたら、島地勝彦御大の本を定期的に読み返して、呼吸を整える。ちょうど夏なので、暑気払いならぬ貧気払い。


以前読んだ時には引っ掛からなかった、以下の部分。ドキュメンタリー映画『ハーブ&ドロシー』について。

『ハーブ&ドロシー』という映画をみた。

…………

ハーブはアートが好きで、独特の審美眼を持っており、それを妻のドロシーに教え込む。そして2人はニューヨークのコンセプチュアルアートやミニマルアートを、芸術家たちがまだ無名のときに買い集めていく。45年間で集めたその点数は、じつに4000点。それを狭い1LDKのマンションに押し込んでいた。

生活費は妻が稼ぎ、アートを買うお金はハーブの給料から捻出した。しかも、彼らは集めた収集品を、値打ちのあがったところで売却して一儲けをしようなどと考えていたのではなかった。身よりのない老夫婦は、45年もかけて集めたコレクションを、すべてナショナル・ギャラリーに寄贈した。買った当初、無名だった作家たちの作品の価格は、100倍、あるいは1000倍に跳ねあがっていたにもかかわらず、である。そこにあるのは、彼らの純粋にアートを愛するこころだった。

(位置1,796〜1,800)


iTunes StoreとAmazonでレンタルできる。この夏に観て、姿勢を正そうと思う。