『エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する』という本を読んだ。
著者のグレッグ・マキューンは、前作『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』がかなり息の長いヒット作になり、読んだ人も多いと思う。日記で確認したら、俺は7年前に読んでいた。当時、息子と娘がまだ小さく、育児と仕事をどう両立していくべきかなどを考えるヒントを求めて、手にした記憶があるし、実際にいいヒントをくれた。

著者のいう「エッセンシャル思考」とは、本当に重要なことを見極め、それを確実に実行するための、システマティックな方法論のことで、目指す生き方は、「より少なく、しかしより良く」。
「より少なく」を目指して、本自体はどこかのタイミングで処分したが、本文中に、エッセンシャル思考と非エッセンシャル思考の対比が多く掲載されており、Macのメモ帳に書き写しておいたものを、今でも時々、確認する。せっかくの機会なので、掲載ページと合わせて表にまとめておく。
掲載頁 | 非エッセンシャル思考 | エッセンシャル思考 |
---|---|---|
57 | やらなくては | これをやろう |
選ぶ余地がない | 自分で選びとる | |
66 | 大多数のものごとが重要だと考える | 大多数のものごとが不要だと考える |
どの選択肢も平等に扱う | 決定的に重要なことだけをとる | |
78 | 両方できるさ | なにを取り、なにを捨てるか? |
どうすれば全部できる? | 何に全力を注ぐ? | |
86 | 忙しくて何も考える余裕がない | 考えるための余裕をつくりだす |
101 | 声の大き意見に反応する | ノイズのなかのシグナルを探す |
話のすべてを聞こうとする | 語られないことに耳を傾ける | |
情報の渦に飲み込まれる | 情報の本質をつかみとる | |
110 | 遊びを軽視する | 遊びを重視する |
遊びは時間の無駄だと思う | 遊びが不可欠だと知っている | |
124 | もう1時間睡眠を削れば、もう1時間仕事ができる | もう1時間眠れば、数時間分の生産性が手に入る |
眠るのは根性なしだ | 優秀な人はよく眠る | |
眠ると怠け者になる | 眠ると創造的になる | |
睡眠のせいで仕事量が減る | 睡眠は仕事の効率を高めてくれる | |
136 | 何にでもイエスと言う | 上位10%にだけイエスと言う |
「みんながやっているから」やる | 「まさに自分が求めていたことだから」やる | |
157 | 価値観やビジョン、ミッションステートメント | 具体的かつ魅力的な戦略 |
具体的だが、人の心を動かさない四半期目標 | 意味があり、心に残る本質目標 | |
価値観はあるが、それを実行するための行動規範がない | ひとつの決断によって、その後のあらゆる決断を不要にする | |
170 | 周囲の期待とプレッシャーに負けてイエスと言う | きっぱりと上手にノーと言う |
なんでも引き受ける | 本当に重要なことしか引き受けない | |
182 | 「こんなに金をかけたのに、今さらやめられない!」 | 「もしもまだ1円も払っていないとしたら、今からこの企画に投資するだろうか?」 |
「やりつづければ、いつか報われるはずだ」 | 「今これをやめたら、何に時間とお金を使えるだろう?」 | |
失敗を認めたくない | すすんで損切りをする | |
197 | 良くすることは、何かをつけ加えること | 良くすることは、何かを削ること |
あらゆる細部に愛着がありすぎる | 不要な細部は冷徹に切り捨てる | |
208 | 境界線は自分の力を制限するものだ | 境界線を引くことで本当の力が発揮できる |
境界線はきゅうくつだ | 境界線は自由を生む | |
毎回ノーを言うのに苦労する | ノーと言わなくてもいいようにあらかじめルールを設定する | |
223 | 最善のケースを想定する | 最悪の事態を想定する |
土壇場にならないとがんばらない | 準備と計画に全力を注ぐ | |
235 | 応急処置を積み重ねる | 本当の障害を取り除く |
仕事が増える | 成果が増える | |
244 | 多くを望み、得るものは少ない | 小さく始めて、大きな成果を得る |
派手な勝利を追い求める | 地味でも着実に勝ちに行く | |
256 | 火事場の馬鹿力に期待する | 正しい習慣を通じて自然に達成する |
重要な事をやるのは例外的 | 重要なことをやるのが普通の状態 | |
271 | 過去と未来に引き裂かれている | 現在に集中している |
昨日や明日の問題について考える | 目の前の問題を考える | |
未来への不安や過去の失敗を思い悩む | 今を楽しむ |
で、その続編とでもいうべき『エフォートレス思考』。
エッセンシャル思考は、「何を」やるかを教えてくれた。
エフォートレス思考は、「どのように」やるかを極める技術だ。(25ページ)
ぶっちゃけると、髪振り乱して我武者羅にがんばらなくても、ちゃんと結果を出せるようになる方法、といったところ。
『エッセンシャル思考』ほどのわかりやすさとインパクトはないが、いろいろあって燃え尽きかけてしまった著者が辿り着いた境地の解説としてサラサラ読めるし、普段「がんばって」しまっている人が読むと、少し肩の力を抜く、いいきっかけになると思う。
あと蛇足だが、この手の自己啓発本は、発売からある程度時間が経つと、出版社が安易な販促に走り、帯に西村博之やメンタリストDaiGo、中田敦彦らの顔写真が並び始めて、およそまともな美意識があれば、とてもじゃないけど書店のレジに持っていけなくなるので、見かけて気になったら、さっさと買っておいた方がいい。
Prologue エフォートレス思考とは
PART 1 エフォートレスな精神
第1章 INVERT 頑張れば成果がでるとはかぎらない
第2章 ENJOY 「我慢」を「楽しい」に変える
第3章 RELEASE 頭の中の不要品を手放す
第4章 REST 「休み」で脳をリセットする
第5章 NOTICE 今、この瞬間にフォーカスする
PART 2 エフォートレスな行動
第6章 DEFINE ゴールを明確にイメージする
第7章 START はじめの一歩を身軽に踏みだす
第8章 SIMPLIFY 手順を限界まで減らす
第9章 PROGRESS よい失敗を積み重ねる
第10章 PACE 早く着くために、ゆっくり進む
PART 3 エフォートレスのしくみ化
第11章 LEARN 一生モノの知識を身につける
第12章 LIFT いちばんシンプルに伝える
第13章 AUTOMATE 勝手に回る「しくみ」をつくる
第14章 TRUST 不信のコストを削減する
第15章 PREVENT 問題が起こる前に解決する
Epilogue エフォートレス思考を生きる