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失敗に不思議の失敗なし - 『世界「失敗」製品図鑑』荒木博行

俺の性格がひねこびているからか、成功本と失敗本だと、圧倒的に失敗本の方が読んでいておもしろい。コクがある。


また実利的にも、いわゆる成功本はファンタジーとしてはおもしいこともあるが、再現性や汲み取るべき教訓の有無という点では、あまりよいものではない。特に成功者本人が書いたものは、自身の「幸運」を「実力」に置き換えるために紡がれているものも多く、あまり真に受けると大怪我をすることもある。

対して失敗本は「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という格言があるように、明確な理由があることが多いので、読んでいて肚落ちもするし、失敗した本人が語っている場合、美しくすらある。

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ということで、『世界「失敗」製品図鑑』を読んだ。失敗したプロダクトのカタログ。20の事例がスッキリとまとめられている。


帯に「すごい会社もハデに「失敗」していた!」とあるが、実態としては「ハデに「失敗」できるすごい会社!」図鑑果敢な挑戦とハデな失敗を許容してそこから学び、成功につなげることができる会社がエクセレント・カンパニーであるということが、よくわかる。事例として挙げられているのが、アップル、グーグル。任天堂、トヨタあたりの会社だし。

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【Amazon製スマホFire Phone】

ただ、GAFAだろうがトヨタだろうが、「成功に不思議の成功あり、失敗に不思議の失敗なし」はどこまでも真理なので、やらかしはちゃんとやらかしだし、スケールが全然違うとしても、ケーススタディとして優れている、楽しめる。

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【セブンイレブン「7pay(セブンペイ)」】

つまり、成功事例を通じた「こういうことをやるべし」というポジティブリスト型の学習ではなく、失敗事例を通じた「これだけは避けておくべし」というネガティブリスト型の学習の方が、その後の試行錯誤の可能性は広がっていくのです。

(2・3ページ)

「失敗」を所与のものとして組み込める人や企業や組織は、強い。


同じ著者が同じフォーマットで「倒産」を解説した『世界「倒産」図鑑』も読んだ。こちらは『世界「失敗」製品図鑑』とはちょっと違う感想があるので、項を改めて読書記録を記した。以下より。

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また、読み物としてはジョン・ブルックスの『人と企業はどこで間違えるのか?』がやはり珠玉なので、余力があればそちらにも当たるべき。

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【目次】
01 アマゾン ファイアフォン
02 フォード エドセル
03 コカ・コーラ ニュー・コーク
04 フェイスブック フェイスブックホーム
05 グーグル グーグルプラス
06 ファーストリテイリング スキップ
07 マイクロソフト ウィンドウズフォン
08 任天堂 Wii U
09 NTTドコモ NOTTV
10 ナイキ ゴルフ用具事業
11 東芝 HD DVD
12 セガ・エンタープライゼス ドリームキャスト
13 セブンイ-レブン・ジャパン セブンペイ
14 ソニー AIBO
15 ネットフリックス クイックスター
16 サムスングループ サムスン自動車
17 ゼネラル・エレクトリック プレディックス
18 アップル ニュートン
19 モトローラほか イリジウム
20 トヨタ自動車 パブリカ