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荒淫矢の如し - 『インターネットポルノ中毒 やめられない脳と中毒の科学』ゲーリー・ウィルソン

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買い物やスマホなどへの依存症である「行動中毒」についての書籍で必ず出てくる「ポルノ中毒」について。

これは脳の性質と、それがまったくちがう環境からのヒントにどう反応するかという話だ。果てしなく供給される、オンデマンドの性的新奇性の慢性的な過剰消費の影響についての話だ。若い頃から無限にハードコアビデオにアクセスする結果の話だ。

(9ページ)


「俺、ポルノ中毒なんだよねー」とカミングアウトする人や、病院に相談に行く人も少ないので、実際に目にすることや話題に上ることはなかなかないのだが、アメリカではかなり問題になっているポルノ中毒。性癖の多様性に無駄に寛容な我が国においても、おそらくすでに中毒者は大量に潜んでいるはず。俺個人の性癖や日常的なポルノ摂取量についてはとりあえずおいておくとして。

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最初に断っておくが、本としては全くおすすめできない。翻訳が粗くて雑なやっつけ仕事で、読みにくいことこの上ない。1つのセンテンスで「ポルノ」を4回も使うな。

ポルノの影響を見極めるために、ポルノ除去研究は重要なので、ポルノの影響を評価するためにポルノ利用を排除しようと呼びかけた学術論文が6つしかないのは残念なことだ。

(38ページ)

校正も仕事をサボっているのか、誤字と思われる部分があちこちにあり、意味が通らない文も多い。以下の部分のように「人口群」と「事項群」を混ぜたり。

研究者たちはポルノ問題について、一部の人口群が高リスクだということを社会に報せてこなかった。その事項群とは、思春期の若者、男性のデジタル原住民、独身ポルノ利用者などだ。

(40ページ)

とにかく雑。『21世紀の資本論』を訳した山形浩生氏による翻訳なのだが、おそらく酔っ払いながら訳したのだろう。ここまで翻訳が雑だと、書籍としての信頼性にも関わると思うのだが。


それはそうとして、読みにくいながらも通読すると、高速インターネットを通じて無限に供給されるドギツいポルノを浴び続けると、どうなるかが、多くの体験者の声と共に紹介されている。

長年たつうちに、はめ撮りポルノじゃもうダメになった。最近では本気でゲイポルノを見たよ。退屈してたからね。何と言うか、まあ28歳のこの身で、基本的にインターネットのあらゆるポルノは見尽くしたから、ゲイポルノだって見ておくかって感じ。その瞬間に種が蒔かれた。「こいつはマジでイカレてる、もうやめないと!」。もちろん、そのときにはやめなかった。

(70ページ)

やめへんのかい!これは病気ですね。

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俺(1970年代生まれ)たちが子供の頃には、エロ本を手に入れるのはちょっとした冒険だった。度胸のある奴が、街の本屋で週刊少年ジャンプに紛らせてエロ本を手に入れたら、ヒーローだった。

大学時代に一人暮らしを始めたときは、小さなレンタルビデオ屋ののれんの奥の部屋でパッケージを吟味しながらアダルトビデオをVHSで借りて、大きな期待を胸に家路を自転車でぶっ飛ばした。

インターネットでエロ画像を見ようとすれば、回線速度に縛られたし、動画などはまだあまり流通していなかった。


ところが今は、パソコンやスマホをクリックやタップするだけで、なんの罪悪感も冒険感もなく、無限にポルノが手に入る。淫靡でもなければ、コクも情緒もありゃしない。

それは店舗で『プレイボーイ』を買うときに感じる恥ずかしさを一切刺激しない。これは「処罰」なしの行動だ。報酬しかない。

(11ページ)

この洪水のようなポルノに、脳の可塑性が豊かな思春期に暴露するとどうなるのか、想像しただけで恐ろしいような気がするし、うちには9歳の息子がいるので、ちょっと注意しておく必要がある。性癖が歪んで、実際の恋愛や交際、性行為に支障をきたす恐れがある。

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無分別なポルノの摂取を断つ「ポルノ断ち」には、以下のような効能があるとのこと。すごいのだが、逆にポルノがどんだけ人間を馬鹿にするのかの証左でもある。

ポルノ断ちは以下の結果をもたらす。

  1. 報酬先送り能力の向上
  2. リスクを取る意欲が高まる
  3. 愛他的になる
  4. 外向的で、良心的になり、神経症が減る

(40ページ)

本書は「ポルノ断ち」の結果として、いわゆる「オナ禁」についても論じられている。本書では「オナ禁」を「タイムアウト」と呼んでいるのだが、以下のような効果があるとのこと。ホンマかいな。

理想的には、長期のタイムアウトで次のようなことができる。

  • 脳の報酬回路の感度を回復し、日常的な喜びを再び楽しめるようになる
  • 使わずにはられなくする「すぐ手に入れたい!」脳経路の強度を下げる
  • 意思力回復(脳の前頭葉前部の強化)
  • ストレスの影響を減らし、激しい渇望を起こさないようにする

(147ページ)


現実の肉体をともなった、交際相手や配偶者に正しく欲情するようになる、というのも、ポルノ断ちやタイムアウトの効能だが、童貞がポルノで性愛について予習するということについても、著者は厳しい。ポルノでの極端なプレイを、セックスと勘違いするな、畳水練ですらないと断じる。

セックスに備えるためにポルノを見てオナニーというのは、ウィンブルドンでの試合に備えて長年ゴルフをするようなものだ。間違ったスポーツの練習をしているのだ。

(117ページ)


これはポルノに限った話ではないのだが、はたしてインターネットは人類を幸せにしているのだろうか、ということを最近よく考える。便利な道具ではあるのだが、賢い人をさらに賢く、愚かな人はさらにとことん愚かにする、格差拡張装置なのでは……。

インターネットポルノ中毒は、裸やエロスに対する中毒ではない。画面上の目新しさに対する中毒だ。

(197ページ)

丸ごと一世代が、その有害性をつゆほども知らずにタバコをチェーンスモーキングしていたとは想像しがたいが、同じことが今日オンラインポルノでも生じている。

(217ページ)


男44歳。妻とともに、健全にエロくありたいと、願う。

【目次】
はじめに ー ポルノ中毒克服の鍵は「脳の中」にある
第1章 ポルノのドカ見が不安、集中力不足、うつを引き起こす
第2章 暴走する欲求
第3章 ポルノを絶って人生をとり戻す
さいごに