3月に突如として刊行が開始された『福田和也コレクション』全3集。
第1集の「本を読む、乱世を生きる」は、厚さ5センチ超の鈍器の如き大部で、大竹伸朗さんの装丁画も素晴らしく、実に景気のいい本だったので、即購入し、楽しく読んだ。
ただ、巻末で「6月頃」と予告されている第2集の音沙汰が、まったくない。売れ行きが思わしくなく、凍結されたのか。どうなっとるんや、KKベストセラーズ。
一時は大量にあった週刊誌などでの連載も今は全滅しており、三番茶のような薄い文章が時々まとめられて新書で出るぐらいで、『罰あたりパラダイス』のような、高カロリーな文章はもう読めそうにもない。食欲減退にともなう執筆意欲の減衰や、盟友の死などを経て、もしかしたら今はただのアル中になっているのではなどと、要らぬ心配もしてしまうが、それでもやはり氏の文章は、楽しいので、なんとか第3集まで完走してほしいのだが。
生きているということ自体が、その味わい嘗め尽くすべき瞬間と我に反る機会の総てに於いて、甘美たりうるし、残酷な程甘い物である。此岸を「彼方」として生きる明確な意志さえあれば、人生は「甘美」な奇蹟で満ち溢れる。
(『甘美な人生』より)