学生時代に生活苦をからテレビを友人に売って以来、あまりテレビを見ない人生を送ってきたし、それで困ったこともないのだが、CMは好きで、雑誌『CMNOW(シーエムナウ)』を読んでいた時期があった。
15秒なり30秒で、いかに売りたいもののイメージを視聴者の感性に植え付けて消費を喚起するかという商売的な部分と、クリエイティビティが見事に両立したCMは、一種の芸術作品だと思う。海外・日本問わず、好きなCMはたくさんあるし、それらをYouTubeで見たりすると、やはり楽しい。
しかし最近、子供が見ているテレビを横から眺めてCMを見ると、10年前20年前と比べて、明らかにCMの質が落ちているような気がする。もちろん、俺がおっさんになって感性が鈍った、と言われればぐうの音も出ないのだが、貧乏臭くて安易で安牌で知能の足りないCMが多いような気がする。
ということで思いつくままに、俺が嫌いなCMを挙げる。ただそれだけの日記。CM内の商品にも出演者にも、特に好悪の感情はなく、それらを否定するものではありません。
- 「ジャンボ宝くじ」 - 若年貧困家庭が宝くじで一発逆転を狙う
- キリン「生茶」 - 満島ひかりの「表現力」に依存しすぎ
- 「モンスターストライク」 - 日本のビザールな文化を喜ぶ外国人旅行客を馬鹿にしている
- 「オッズパーク」 - ギャンブルアプリ
- TOYOTA「VOXY」 - 親と子の恋人ごっこ
- ビール、またはビール系飲料 - タレント集めて駄弁らせて飲むだけ
「ジャンボ宝くじ」 - 若年貧困家庭が宝くじで一発逆転を狙う
今をときめく人気タレントの妻夫木聡・吉岡里帆・成田凌・矢本悠馬・今田美桜が5人兄弟姉妹として登場するシリーズ。両親の存在が感じられないので、おそらく扶養を放棄された5人が協力して暮らしているのだろうが、セットを見る限り貧困層。
で、そんな貧しいながらも明るく生きる5人が、宝くじでの一発逆転を夢見て買いまくるという内容。長男の妻夫木聡が顕著なのだが、登場人物の知能に問題があるように描かれており、当選すればいいね、高額当選すればいなくなったおとうさんとおかあさんも帰ってきてくれるかもしれないね、という優しい気持ちになる。
宝くじのCM、昔は当たったら孫におこずかいをあげようかな的な設定の老人が買うような、あくまでも「娯楽」として訴求していたような記憶があるのだが、いつの間にが若年層が人生の一発逆転の願いを込めて買うようなものになってしまった。日本は、そんなに貧しく切羽詰まってしまっているだろうか、という暗澹として気持ちになるので、嫌い。
キリン「生茶」 - 満島ひかりの「表現力」に依存しすぎ
満島ひかりが生茶をすすって感動するCM。「演技力」に定評のある満島ひかりに、どアップと思わせぶりな表情で、いかに美味いお茶かを表現してもらおうとしているのだろうが、この人の本分はおそらく、どんなややこしい役でも器用にこなす「演技力」にあるのであって、「表現力」はまた別の話のような気がする。
ペットボトルのお茶にしては美味い、という部分が表現できているとは思えないし、製作サイドが満島ひかりにおんぶに抱っこしているような雰囲気が感じられて、嫌い。
「モンスターストライク」 - 日本のビザールな文化を喜ぶ外国人旅行客を馬鹿にしている
今回、【満島真之介 CM 宇宙人】でGoogle検索して初めてスマホゲーム「モンスターストライク」のCMだと理解したのだが、今をときめく人気タレントの満島真之介・染谷将太・志尊淳・矢本悠馬の4人が、奇抜なファッションに身を包み、奇矯な声をあげながら日本の「カルチャー」を喜ぶ、という内容。
製作者の意図はよくわからないが、俺には、欧米からの外国人旅行客は、日本のこういうところが好きなんでしょ的な部分を煎じて煮詰めて提示しているように感じられた。
うるさいし不快だし、嫌い。
「オッズパーク」 - ギャンブルアプリ
アンタッチャブルの2人が、キャバクラ嬢風の女性ダンサーたちと踊り狂うシリーズ。
CMのターゲットを明確に設定して、そこにブチ刺さる要素をてんこ盛りにしているので、CMとしては素晴らしいのだろうが、とにかく頭が痛くなる。
アンタッチャブルの山崎から、無理して頑張っている感があふれ出ているのも、見ていて辛い。プロフェッショナルだなあとは思うが、CMは嫌い。
TOYOTA「VOXY」 - 親と子の恋人ごっこ
青木崇高・優香夫妻が、それぞれ娘と息子を誘ってドライブデートに出かけるCM。それぞれが子供に格好をつけたいからVOXYを選ぶ、という内容なのだが、生理的に気持ち悪い。
各ご家庭の中で繰り広げられるなら微笑ましいのだが、青木崇高・優香がそれぞれ、それまでのイメージとは異なるクールなパパママを演じて、それに対して子供がなんか言っていて、セリフ・演出・表情、すべてが気持ち悪い。嫌い。
ビール、またはビール系飲料 - タレント集めて駄弁らせて飲むだけ
特定のCMというわけではなく、各社が最近よく出す、タレント集めて座談させて飲んで喜ぶ「だけ」のCM。出演するタレントも「安定感のあるキャスト」といえば聞こえはいいが、安易で安牌なチョイスをダイバーシティをちょっと気にしながら脈略なく老若男女を散りばめた感がむき出しで、すべてにおいて、安直。
会議30分、スケジュールさえうまく押さえられれば2時間ぐらいで作れそうで、嫌い。
「CMは、悪印象でも印象に残れば成功」的な言説もあるが、意味がわからない。CMも見るべきものがなくなってしまったら、いよいよ民放を見る理由がなくなってしまう。よければ皆さんの嫌いなCMをコメントなりで教えてください。YouTubeで見てみます。