『未来の子どもたちを守る家』

- 作者:小山 貴史
- 発売日: 2016/11/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
エコワークス株式会社より賜本
来年竣工予定の自宅の建築をお願いしている福岡の工務店・エコワークス株式会社の代表取締役である小山貴史氏の著書。間取りの打ち合わせ時に1冊賜本*1いただいた。契約もして打ち合わせも登山で言うところの三合目ぐらいまでは進んでからの読書だったので、ちょっと順番が逆になってしまった感はあるが、エコワークスと一緒に進める自宅建立に対しての確信を深めることができた。
エコワークス:新築木の家専門住宅メーカー・工務店(福岡・熊本)

小山社長の危機感と工務店経営
2015年にパリで開催された気候変動に関する国際会議・COP21関連ビジネス会合に実際に参加されて、地球環境の現実とそれに対する各国の取り組みに衝撃を受けた上で、その課題に対して自身の工務店ビジネスを通じてどのように寄与できるか、寄与しつつ施主の満足度も高めるためにどのように取り組んでいるかについて書かれており、かなりアツい。
出版が2016年なので、5年間の間に世界の情勢は進んでいるし、さらに言えば日本はその分取り残されているのだが、家づくりを通じて地球環境と施主の健康と幸せに寄与する、というエコワークスの姿勢は一貫していると感じるし、エコワークスはさらに踏み込んで、現在はSDGsを全社的に推進しているようで、とにかく社長だけでなく、社員もアツい。なんなら、その熱で地球の温暖化が促進されてしまいそう。
その熱に当てられて、我々夫婦もこれまで考えてなかったことをいろいろと考えたり話すようになった。
未来の子どもたちに叱られない家・未来の子どもたちに謝らないでいい家
ただ、副題が【未来の子どもたちを守る家】となっており、また帯には【未来の子どもたちに感謝される家とは?】とあるが、俺としては【未来の子どもたちに叱られない家・未来の子どもたちに謝らないでいい家】という気分で建てたい。「守る」のは当然だが、「感謝」はこちらが期待してもしょうがない。ただ「叱られない」ようにはしていきたい。普段、子どもたちを叱り飛ばしている分、余計に。

読書メモ
日本が住宅の性能ではなく創エネに傾倒する事情
実は、一般家庭の創エネに注力しているのは、日本のエネルギー政策の特徴です。欧米では、建物そのものの断熱性能を向上させることによって省エネ化を進めるのが一般的で、受託における創エネの普及はあまり進んでいません。
……(中略)……
なぜ日本では住宅での創エネ、ZEHが推進されているのでしょうか。その背景の一つには災害大国という日本の事情があります。
(109ページ)
立派な家を建てても定期的な災害でどうせぶっ壊れるんだから、という諦念は、テクノロジーと丁寧な仕事でどうにかするべきだし、それに見合った金額は支払うべきだと思う。安いものには安い理由がある。
ZEHとは
(ZEHを)まとめると、
- 断熱性の高い建物を建てて
- 高効率な設備を設置し
- 室内活況の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現し
- 太陽光発電を搭載して
- 年間のエネルギー収支をプラスマイナスゼロ以下にする
ことを目指す。
(116ページ本文をもとにリスト化)
エコワークスにおいてはもはや最低基準のような扱いになっているが、ZEHについての説明は上記のものがわかりやすかった。
「お帰りなさい、気をつけて」
厚生労働省の調査によると、入浴中に亡くなる人は年間1万9000人とも推計されています。これは交通事故で亡くなる人の4倍以上で、最近では日本の住宅が抱える大きな問題のひとつになっています。
(136ページ)
交通事故で死ぬより家の中で死ぬ人の方が多いなら、「いってらっしゃい、気をつけて」ではなく、「お帰りなさい、気をつけて」が正しくなってしまう。
長く不健康な晩年
日本は世界でも有数の長寿国ですが、内閣府の「平成26年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者の約半数が何らかの健康上の自覚症状を訴えています。また、日常生活に制限がなく暮らせる期間を「健康寿命といいますが、平均寿命(男性79.5歳、女性86.3歳)に比べて健康寿命は男性で9年、女性で12年も短くなっています(男性70.4歳、女性73.6歳)。長生きしても最後の10年ほどは体の不調とつきあいながら、場合によっては寝たきりで過ごしている人が多いのが現状です。
(149・150ページ)
ピンピンころりを目指したいものですね。

- 作者:小山 貴史
- 発売日: 2016/11/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
*1:「献本」という上から目線の言葉が好きではないので、当ブログでは「賜本」という造語を使う